IT企業(社員30名)におけるテレワーク実践の過程と結果

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IT企業(社員30名)におけるテレワーク実践の過程と結果

1. A社のプロフィールと選定に至る事情

A社は東京都内に本社を置く社員30名のIT企業で、業務用ソフトウェアの受託開発と、自社で開発したクラウド型Webサービスの提供を行っている。

2020年4月7日、新型コロナウイルス感染拡大に伴う政府の緊急事態宣言が、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、大阪府、兵庫県及び福岡県に対して発令(16日からは対象地域を全国に拡大)され、「出勤者7割削減」が求められたのを機に、A社でも全社員を対象とした在宅勤務(テレワーク)の実施を急遽決定。翌日より準備に着手し、4月14日から全面的な実施に移した。

テレワーク導入にあたっては、社内会議や社外との商談の実施に必要なコミュニケーション(Web会議)手段と、社内で行っている業務を自宅で継続可能とするためのリモートPC環境の2つを用意することにした。

前者に関して、コロナ禍発生の初期からリモート商談の頻度が高まっていた事情もあり、2月の時点で「Zoom」を部分的に導入していたが、複数参加者による長時間のWeb会議実施に必要な有料IDの契約・配布には着手していなかったので、テレワーク開始を機に全社員用のIDを用意・展開し、基本的な使用方法を周知した。

後者については、VPN(仮想プライベートネットワーク)やVDI(仮想デスクトップ基盤)、Windows Serverの機能である「リモートデスクトップゲートウェイ」などの利用も検討したが、検討の結果、準備期間や社内ネットワーク構成上の制約(主にファイアウォールなどのセキュリティ面)から、社内で利用経験のあった「NetSupport Manager(以下NSM)」が最適と判断した。

A社では10年程前からNSMを顧客対応向けに使用中であり、利用方法や設定に関して一定のノウハウが蓄積されていた。



2. 導入過程


●2020年4月8日(水)

テレワーク実施方針の決定と手段の検討

社員宅から会社PCへの接続手段としては、社員宅のPCとインターネット回線を利用することを原則としたが、一部の社員は自宅にPCや固定インターネット回線を持たないため、社内で保有しているノートPCとモバイルWi-Fiルーターを、NSMおよびZoomの環境一式を構築した上で該当の社員たちに貸与することにし、必要な数を確認し、機材の準備を開始した。

NSMのライセンス数確認と追加発注

社内で保有中のNSMは5ライセンスしかなかったことから、この日NSMの日本代理店であるワイドテック社に、余裕分も考慮し30ライセンスを注文。

ゲートウェイの構築

NSMのゲートウェイとは、インターネットから参照可能なサーバーに配置する中継用ソフトウェアであり、NSMのインストーラに含まれている(カスタムインストールを選んだ場合にのみインストールされる)。
社員宅のPC(操作側)・会社のPC(被操作側)がそれぞれゲートウェイを参照するように設定することで、ルーターやファイアウォールなどのネットワーク構成を変更することなく、相互に接続可能となる。
構築先は社内のサーバーではなく、社内・社員宅のいずれからもアクセスできるパブリッククラウドを選択。ゲートウェイはWindows OSへのインストールが動作条件となるため、Windows Server 2016インスタンスを利用して構築した。

テレワーク構築事例

NSMを用いたテレワークの実践テスト

ゲートウェイ構築は30分程度で完了し、直後からNSMクライアント(被操作側ソフトウェア)が導入済みのA社のネットワーク内の業務PCに、社外のネットワークであるモバイルWi-Fiルーター経由で、NSMコントローラ(操作側ソフトウェア)をインストールしたノートPCからアクセスし通常業務を行うという、擬似的なテレワーク環境のテストを10日までの3日間実施し、利用上の問題が発生しないことを確認した。


●4月9日(木)

社員側インストーラと簡易マニュアルの作成

社員宅PCでコントローラをインストールしてもらうための「サイレントインストーラ」の準備と、インストール手順を記した簡易マニュアルの作成。
サイレントインストーラとは、コントローラ本体のインストール以外に必要な諸設定(ゲートウェイへの接続を含む)を同時に実施可能としたインストーラで、作成方法はNSMのマニュアルに記載されている。インストーラをダブルクリックするだけで自動的にインストールが完了するため、社員に配布するマニュアルの記載も、最低限の簡易的なもので済む。


●4月10日(金)

社内PC側でのインストール作業

ワイドテックより30ライセンスのNSMが納品されたところで、社内PCへのクライアント(被操作側ソフトウェア)のインストールを実施。
設定を社内のシステム管理者以外が任意に変更できないようパスワードを設定する必要から、クライアントのインストールはシステム管理者が直接実施した。


●4月13日(月)

最終周知と機材配布

テレワーク全面展開前の最終出勤日。全社向け同報メールを通じ、NSMを用いたテレワーク実施方法の周知と、自宅にPCやインターネット回線を持たない社員への機材配布(貸与)を実施した。

以上のような一通りの準備を、4月8日~10日と13日のわずか4営業日で完了し、とりわけNSMの展開についてはライセンス入手の都合もあり、10日と13日の実質2日間で作業を完遂した。
翌14日より全社的なテレワーク体制に入り、緊急事態宣言解除後の6月初週まで継続した。



3. 導入効果

A社情報システム担当者へのヒアリングをもとに、NSMをテレワークに利用したA社からの所感を、以下に列挙する。

ネットワーク設定の変更が不要

今回最大のメリットと感じた部分であり、HTTP(Web通信)を用いる独自のゲートウェイにより、Webサイト閲覧が可能な状態になってさえいれば、会社・社員宅ともにネットワーク構成などを特に変更することなく、社員宅から会社のPCへの接続が可能。VPNやVDIの構築は不要、Windows Serverでリモートデスクトップゲートウェイを構成するより手軽であった。

インストールの容易さ

Windowsにアプリケーションをインストールできる程度のスキルで、社員宅でも設定が可能。

セキュリティ

クリップボードやファイル転送を禁止する機能があり、ファイルやその他の業務情報が会社のPCからコピーされて流出する事故を防止できる。これらのセキュリティ設定をユーザーが変更できないよう、パスワードロックすることも可能(設定はいずれもクライアント側で行う)。

速度と利便性

一部の社員は会社支給や自己所有のモバイルWi-Fiルーター(携帯電話キャリアのLTE網を用いるもの)で会社に接続していたが、モバイル回線でも実用的なレスポンスが得られた。表示の拡大・縮小についても自由度が高く、社員宅と会社のPCで画面解像度が異なる場合でも、全画面表示が可能。

幅広い対応OS

コントローラ、クライアントともにWindows以外にmacOSにも対応し、コントローラはiOS/iPadOS、Androidなどのスマートデバイス向けも用意されている。A社の社内にある業務PCはすべてWindowsであったが、MacやiPad、Androidタブレットから会社のPCに接続していた社員もいたとのこと。

ライセンスが買い取り型、かつ低価格であること

テレワーク用のサービスには月額利用料金(サブスクリプション費用)が発生するものが多いが、NSMは買い取り型のライセンス体系となっており、一度購入すれば追加費用が発生せず(保守契約を除く)、しかも1ユーザーあたりの費用も他社の月額サブスクリプション費用と大差なかった。

A社のNSMを用いたテレワークへの満足度は大変高く、コロナ禍沈静後も引き続き利用したいとの意向である。
全社でのテレワーク終了後も、社員の事情に応じて個別にテレワークを許可しており、4月に構築したNSMによるリモートPC作業環境を、現在も継続して利用中にあるという。

なお、緊急事態宣言期間中にはテレワークが平日の営業時間帯に全国で実施されたことから、インターネット回線やWeb会議システムのサーバー等に輻輳が生じ、業務に支障が出たケースがメディアで報じられた。A社に対するヒアリングでも、カメラやマイクを用いたWeb会議では切断・遅延を少なからず経験したが、NSMで実施していたリモートPC作業に関しては、業務遂行上の支障は特になかったとのコメントをいただいたことを、最後に書き添えておきたい。


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※事例に記載された学校名・部署名等の情報は取材当時のものです。閲覧時点には変更されている可能性があることをご了承ください。

取材:2020年8月