DXで解決できる病院・医療機関の課題と導入に必要なこと
公開日:2021/12/01 更新日:2024/02/28
高齢者人口の増加が止まらない昨今の日本では、医療従事者の負担も大きくなっています。一方で労働人口は減少の一途をたどっており、人材の確保に苦しんでいる病院・医療機関も多いでしょう。こうした状況の打開策として注目されているのが、「DX」です。
「DX(Digital Transformation:デジタルトランスフォーメーション)」とは、デジタル技術の活用によってビジネスを抜本的に変える取り組みです。欧米だと「Trans」は「X」と略されることが多いため、DXと呼ばれています。
DXを取り入れることで病院・医療機関の業務効率化を実現でき、人手不足をカバーできます。DXは様々なビジネスで広まっているものの、まだまだ病院・医療機関では浸透していないのが現状です。そこで本記事では、病院・医療機関でDXを取り入れるために必要な知識を一通りお伝えします。
1. 病院・医療機関が抱える課題
日本は2007年に「超高齢社会」へ突入し、その後も高齢者の増加・労働人口の減少は続いています。高齢者の増加に伴って医療サービスの需要も拡大し、医療現場の負担は増加する一方です。限られた医療スタッフで多くの業務を扱うためには、デジタル技術による業務効率化が欠かせません。
しかし日本の医療現場では、デジタル化があまり進んでいないのが現状です。2020年以降の新型コロナウイルス感染症によって、デジタル化の遅れが浮き彫りとなったのは記憶に新しいところ。日本では、いまだにFAXを主な連絡手段とする医療現場が多いのです。
また、医療物資を統合的に管理・共有するオンラインシステムも確立していません。その結果、新型コロナウイルス感染症が影響をもたらした病床数の飽和状態を代表例として、医療機関・保健所間での情報共有が滞ったり、医療物資が適切に配分されなかったりするケースが生じたのです。こうした状況の変化に対応するためにも、DXによる業務効率化が必要不可欠となります。
2. 課題を解決する病院・医療におけるDXとは
DXの取り組みによって業務効率化を実現できるため、医療現場において人材不足の課題解決につながることが期待されています。また新たなサービスの創出により、顧客満足度の向上も予測されます。医療現場にDXを取り入れることで、具体的には下記の4つが実現可能です。
- オンライン診療
- 医療情報の電子データ化
- 予防医療の普及
- 医療の研究開発への活用
ひとつずつ、順番に解説します。
オンライン診療
医療現場にDXを取り入れることで、オンライン診療が可能となります。オンライン診療とは、インターネットを通して離れた患者を診察できる仕組みのこと。患者はパソコンやスマートフォンにより、自宅にいながら診療の予約から会計までを行えます。処方薬を郵送してもらうことも可能。
オンライン診療により、身体的な事情で移動が難しい患者でも、手軽に診療が受けられるほか、医療スタッフが訪問診療などで移動する必要もなくなります。患者にとっても医療スタッフにとっても、診療のために生じるさまざまな負担を減らせるのが大きなメリットです。
医療情報の電子データ化
医療現場にDXを取り入れることで、医療情報の電子データ化が可能です。
紙を用いる従来のカルテでは、大量の診察情報を管理するために多くの手間がかかります。必要な情報をすぐに取り出せないばかりか、診療情報を取り違えるリスクさえあるのです。ミスが許されない医療現場では、医療情報の正確な取り扱いが課題といえます。
こうした課題を解決するために有力となるDXの取り組みが、電子カルテの導入です。電子カルテによって患者の医療情報をオンラインで取り扱えるようになり、紙のカルテに比べて管理コストを大幅に削減可能。また、必要な医療情報に正確・迅速にアクセスできるため、医療サービスの品質向上にもつながるでしょう。
予防医療の普及
医療現場にDXを取り入れることは、予防医療の普及にもつながります。前述のとおり、DXにより医療情報を電子データ化することで、医療情報のデータ活用が容易となるのです。AI(人工知能)を用いて膨大な医療情報を分析すれば、病気に関する様々な知見が得られるでしょう。
不明点の多い病気の前兆が明らかになれば、発症リスクを早期発見できます。患者の健康推進につながるのはもちろん、病気が進行してから発覚し、命を落とす患者を減らせるのです。また病状が重くなってからの対応では、多くの医療スタッフの労力を費やすこととなります。予防医療を実現すれば、医療スタッフの負担軽減にもつながるでしょう。
加えて、少子高齢化が進む日本では、医療費も年々増大しています。予防医療による早期発見で重篤化を防ぎ、また医療現場の負担を減らすことで、増大する医療費の抑制も期待できます。
医療の研究開発への活用
医薬品の研究開発における課題の解決にも、DXが有効です。
医薬品の研究開発には、多大な労力や費用がかかります。数年かけて試行錯誤したにもかかわらず、途中で研究開発を断念するケースも少なくありません。こうした研究開発にかかるコストを抑えるために、生産性向上が課題となっています。
そこで、AIを駆使したビッグデータ活用によりDXを実現すれば、遺伝子情報などの解析を効率的かつ高精度に行えます。生産性向上を実現することで、より費用対効果の高い研究開発が可能となるのです。患者としても、様々な新薬を安価に入手しやすくなるメリットがあります。
3. 病院・医療のDXを推進するために必要なこと
結論として、これからの医療現場には、DXの取り組みが必要不可欠となるでしょう。医療現場でDXを実現するために、必要なことを把握しておく必要があります。具体的には、下記の3つです。
- 目的の明確化
- デジタルツール・システムの導入
- セキュリティ対策
DXの取り組みを成功させるためには、開始時に目的を明確化することが大切です。また、DXはデジタル技術を中核とした取り組みのため、デジタルツール・システムの導入も欠かせません。それに伴って、各患者の個人情報はもちろん、社内情報もデータ化して取り扱うことになるため、セキュリティ対策も必須となります。それぞれについて、詳しく解説します。
目的の明確化
まずは、DXを実現する目的を明確にしましょう。病院ごとに抱えている問題や不足している点は違うため、それぞれどこが足りないのか現状把握したうえで目的を定め、それを達成するための各フェーズでの具体的な目標設定が必要です。目的や目標があいまいだと、どのような施策が必要なのかが見えてきません。また、DXを推進すること自体が目的となってしまい、効果的な施策が行えなかったという本末転倒になるケースも考えられます。
たとえば、「医療事務の業務効率化」が目的だとすれば、「医療事務スタッフの残業を前月比30%削減する」などの数値が、段階ごとの目標として挙げられます。このように目的を明確化することで、DXの取り組みにおける方針がぶれにくくなります。ただし、目的だけだと方向性しか分からず、かつハードルも高く感じてしまいます。そこで、目標を設定することによって何をすべきか明確にし、取り組みやすくするのです。
デジタルツール・システムの導入
DXの実現にあたって、ツール・システムの導入が必要不可欠です。ツールやシステムの種類は様々ですが、前述の電子カルテ以外では2つが代表として挙げられます。ひとつ目は「RPA」です。「RPA(Robotic Process Automation)」とは、パソコンの定型作業を自動化するソフトウェアです。主に医療事務における定型作業の手間やミスを、大幅に軽減できます。
2つ目は、「Web問診システム」です。「Web問診システム」とは、患者が診察前に記入する問診票をオンライン化できるシステムです。診察前の記入時間を短縮できるうえに、紙の問診票のコスト削減にもつながります。
これらのツールやシステムの導入は、一気に推し進めれば良いというわけではありません。使用する医療スタッフ一人一人が業務しながらでも、問題なく扱えるようにするため、段階を経て移行していくのが賢明です。下記の3ステップに沿って進めましょう。
- ① デジタルパッチ(部分的な導入)
- ② デジタルインテグレーション(既存の仕組みへの統合)
- ③ デジタルトランスフォーメーション(新たな仕組みへ完全移行)
セキュリティ対策
DXを推進する上で、セキュリティ対策が重要となります。医療情報を電子データ化してオンラインでアクセスできるようになると、どうしてもサイバー攻撃のリスクを排除できません。患者や診療に関する重要な情報が漏洩する事態となれば、病院の信頼は失墜するでしょう。
厚生労働省は、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」を提示し、医療機関におけるサイバーセキュリティ対策の強化を求めています。以下のページで具体的な対策をご紹介していますので合わせてご参考ください。
医療機関のサイバーセキュリティ対策なら、閉域網での作業が得意なNetSupport
セキュリティ対策として性能の高いツールやシステムを選定することは重要ですが、同時に、医療情報をオンラインで取り扱う際のルールを厳格に定め、医療スタッフに周知することも必要です。システム・スタッフの両面からセキュリティ対策を行いましょう。
4. 病院のシステムサポート事例:「NetSupport」の場合
DXの推進にあたって病院のシステム管理者が懸念として抱くのが、パソコンなどの機器管理です。病院でオンラインシステムを構築する上で、大抵の企業よりもサーバーやクライアントパソコンがどうしても増えてしまいます。多くの機器を限られた人材で扱うことになれば、人的コストも増大するでしょう。
こうした課題を解決するために、「NetSupport Manager」の導入をおすすめします。NetSupport Managerとは、職場における安全性に優れた多対多の接続ができるリモートコントロールソフトウェアです。リモート操作での保守を可能にする点から、電子カルテや電子処方箋システムのサポートに役立ちつつ、さらに院内向けの遠隔教育も可能になります。
また、電子カルテなどのシステムを構築・運用・保守する際に移動が不要となり、DXの推進におけるサポートとして大幅な省力化につながります。あるシステム開発会社では実際に、電子カルテシステムを構成するパソコンの管理にNetSupport Managerを使用している事例があります。
5. まとめ
今回は、病院・医療機関でDXを取り入れるために必要な知識を一通りお伝えしました。DXとは、デジタル技術を活用することで、ビジネスを抜本的に変える取り組みです。DXを取り入れることで業務効率化を実現でき、病院・医療機関で深刻化する人手不足や業務過多を改善できます。
DXを推進するうえで、目的の明確化やセキュリティ対策、ツール・システムの導入が必要。ツールやシステムには様々なものがあるため、各医療現場のニーズに合わせて選定する必要があります。また、DXの取り組みにおいては、パソコンなどの機器管理も課題となります。
「NetSupport Manager」は「使いやすさ」を強みとしているソフト。リモート操作での保守を可能にする点から、電子カルテや電子処方箋システムのサポートに役立ちつつ、さらに院内向けの遠隔教育も可能になります。さらに、1ライセンスあたり2,129~3,458円と低価格で導入できます。
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